中部

2018年8月-10月

新潟県村上市立三面小学校

三面小学校は2000年に旧茎太小学校と旧三面小学校が統合した学校で、教育活動の多くの場面で地域の方に支えられ、地域の自然や文化を生かし、子どもたちの豊かな学びを育んできました。
2019年3月に19年間の歴史に幕を閉じる三面小学校は、長岡造形大学のご協力のもと、子どもたちと保護者、地域の皆様など80名を越える方々が参加し、最終年度にふさわしい一大イベント「KOP」を開催しました。力を合わせて一つの作品をつくることを通して、みんなで素敵な思い出をつくることができました。

01校舎の思い出ギャラリー

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02先生インタビュー

新潟県村上市立三面小学校(左から)脇川先生、菅原先生、野澤先生、小川校長先生、五十嵐先生、栗木先生

「校舎の思い出プロジェクト」を行うことになったきっかけについてお聞かせください。

小川校長先生このプロジェクトを村上市教育委員会から紹介してもらいました。閉校記念式典と違い、子どもたちが主体の思い出づくりの活動でしたので、是非行いたいと思いました。子どもたちの三面小学校に対しての愛着や誇りを一層深めたいと考えました。

菅原先生閉校に向けての三面小学校の一大イベントとして位置づけ、学校、地域、PTAが一体になる活動を展開したいと思い、応募することにしました。

校舎の思い出プロジェクト」のサポートプログラムはいかがでしたか?

小川校長先生一眼レフカメラの貸し出しと授業の実施、アルバムやポスターの作成、絵の具の提供などとても充実していました。また、こちらのプログラムに合わせていただいたこともありがたかったです。

菅原先生当日まで詳細な計画、連絡を何度も行いながら、当校の要望も快く引き受けていただきました。特に長岡造形大学の協力を得ての計画であったため、三者で方向、考えを共有しながら進めていただきました。校舎にペイントするという大胆なプロジェクトと子どもたちの興味津々なやる気がマッチした素晴らしい企画で、子どもたち、保護者、地域の方々が注目する一大イベントとなりました。

野澤先生当日、子どもたちがスムーズに取り組めるように段取りがしてあり、よかったです。保護者も一緒に活動できたところも、思い出を深めるためのひとつになったと思います。

特に印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。

菅原先生11月24日に行われた「閉校記念式典」で来校した卒業生が自分たちもメッセージを残したいとKOP(校舎思い出プロジェクト)に協力して、ペイントの場所に思い出を書き記していました。このプロジェクトに参加したかったなあと悔しがっていました。

五十嵐先生手形ペイントでは、卒業した中学生、高校生も参加して、家族で楽しそうに手形を押していたことが印象に残っています。

栗木先生両手に絵の具をつけてペイントしているうちに、髪の毛や顔に絵の具がついて、それでもニコニコ楽しそうに活動している姿が印象的でした。

学校の壁という本来描いてはいけない場所に、初めて子どもたちが描いていくときはどのような反応でしたか?

小川校長先生はじめは、恐る恐る廊下や体育館壁面に描いているようでしたが、すぐに慣れ、喜びながら、いきいきと活動に取り組んでいました。

菅原先生子どもたちの早くやりたい、描きたいという思いが大きく、普段使っている体育館へのペイントは最高にテンションが上がる活動だったと思います。どんどん大胆になっていく子どもたちを見ていて、嬉しくなりました。

野澤先生最初は遠慮していましたが、やっていくうちに「もっとしたい」と、どんどん笑顔で進めていました。

子どもたちが撮影した写真や、撮影している様子をご覧になっていかがでしたか?

小川校長先生子ども同士で撮影していることで、大人が撮るときとは少し違い、自然な笑顔があふれ、素敵な写真が多かったように思います。

菅原先生高価なカメラを小さな1年生が操作して大丈夫かなと心配していましたが、臆せずどんどん撮っていたので、反対にこちらが驚かされました。

五十嵐先生子どもの目線で撮った写真がすごく上手でビックリしました。写真に写っている人はみんな笑顔で、みんないい顔でした。

保護者や卒業生、地域住民の皆さんの反応はいかがでしたか?

小川校長先生子どもたちも保護者、地域の方々も大変よろこんでいました。校舎に絵を描く経験は初めてで、今まで過ごしてきた学校に感謝の気持ちを込め、親子で一緒に活動できたことは、思い出深い活動になりました。

菅原先生長岡造形大学の皆さんの協力のもと、大胆かつ斬新なペイント活動ができ、皆さん大満足でした。地域の広報誌に載せるために、取材していた方もいました。また、夏休みの活動では新潟県の民放テレビ3局、地元の新聞社が2社、取材に来るほどの盛況でした。

野澤先生保護者は、子どもたちと一緒に参加できるということもあって、多くの方が参加していたと思います。子どもたちは夢中で塗っていました。完成すると「おぉ~!」と喜ぶ子もいました。

今後、「校舎の思い出プロジェクト」を多くの小学校にて展開をしていきたいと考えております。 このプロジェクトに今後期待することや、メッセージがございましたらお聞かせください。

小川校長先生子どもたちもそうですが、それ以上に保護者や地域の方の、学校に対する思いの深さを実感しました。今後も、子どもたちとともに保護者や地域の方も一緒に取り組める活動として展開してほしいです。

菅原先生いろいろな思い出を頭の中に入れて閉校を迎えることも一つかと思いますが、今回思いっきりKOPに挑戦して、子どもたちや保護者、地域の方々に大きな大きな思い出を残すことができたと確信しています。新しいことに挑戦する勇気とやる気で何とかなるので、やらずに終わるよりは、まずはやってみることかなと思いました。きっと子どもたちの中に大切な母校の思い出として、くっきりとした形で残っていくと思います。

五十嵐先生閉校は寂しいですが、思い出のつまった校舎で保護者や地域の方も何かを作り上げていく体験はこれまでの学校での思い出を振り返りつつ、これから先の未来を見つめる活動でもあるのかなと思いました。子どもたちの心にずっと残るすてきな活動だと思います。

その他、何かありましたら、ご自由にご記入ください。

小川校長先生県北の地であるにもかかわらず、何度も足を運んでいただき、大変ありがたかったです。学校の願いを受けとめ、柔軟に対応していただいたことで、すばらしい思い出づくりとすることができました。担当して頂いた皆様の対応も大変丁寧で、とてもありがたかったです。

菅原先生大きな企画でありながら、メールや電話の対応が丁寧で何も不安や心配をすることがありませんでした。当校の要望を的確に反映していただき、とてもありがたかったです。  

03長岡造形大学インタビュー

長岡造形大学の皆さん(前列中央が岡谷准教授)

岡谷准教授のコメント

「校舎の思い出プロジェクト」を行うことになったきっかけについてお聞かせください。

三面小学校から本学に協力の要請をいただいたことがきっかけです。私自身はワークショップの経験はあまりなかったのですが、専門の版画の技術が生かせそうだと考え、お手伝いすることになりました。

「校舎の思い出プロジェクト」のサポートプログラムはいかがでしたか?

筆や絵の具など、大量の資材を提供いただき、ありがたかったです。筆で壁に描く場合の、使用する絵の具の量などの情報は、こちらで正確にはわからなかったのですが、ぺんてるの情報から推察することができました。

特に印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。

体育館の壁のペイントでのエピソードです。下地の色を塗った段階では、どうなるのか想像できなかったので、不安そうな生徒も多かったのですが、上から描くモチーフを指導したところ、どんどん描いていくことで作品がどんどん華やかになっていく変化の過程が、生徒のテンションも上がっていくことと呼応して、とても綺麗でした。

学校の壁という本来描いてはいけない場所に、初めて子どもたちが描いていくときはどのような反応でしたか?

1日目の身体の輪郭線をトレースする段階では、描画材がクレヨンだったので、いたずらの延長のように楽しそうに描いているのが印象的でした。下地の色を塗る段階では、あまり躊躇せずに塗っているように感じました。2日目は、描くモチーフが明確だったため、積極的に描く生徒も多く、満足げな様子でした。

保護者や卒業生、地域住民の皆さんの反応はいかがでしたか?

大変協力的で、ありがたかったです。廊下のシルクスクリーンを印刷する作業は、手で押さえるなどの作業が必要でしたが、皆さんの手を貸していただきなんとか時間内に刷り上げることができました。体育館の壁画に関しては、1日目の作業との変化も含めて楽しんでいただけた方も多く、完成した作品も喜んでいただけたと思っています。

今後、「校舎の思い出プロジェクト」を多くの小学校にて展開をしていきたいと考えております。 このプロジェクトに今後期待することや、メッセージがございましたらお聞かせください。

今回のイベントに対して一番意識したことは、企画する我々や、地域の大人たちが喜ぶ企画よりも、未来をつくる子どもたち自身が、楽しみ・喜び・今回の体験そのものが思い出になっていくようなワークショップをすることでした。それが、結果的には良い結果に結びつくのだと思います。

その他、何かありましたら、ご自由にご記入ください。

美術の授業が少なくなり、子どもたちが思いっきり絵を描く機会が少なくなってきています。今回のような企画は、子どもたちの創造性を刺激するうえでも良いイベントだったと思います。是非続けていただきたいと思います。

ご参加いただいた学生の皆さんのコメント

・ 子どもたちの慣れ親しんだ画材を思う存分使え、一眼レフカメラという機械に触れる機会も作れるため、とても良いと思います。思い出をフォトブックにしてくれるサービスも良いなと思います。

・ 子どもたちにとって初めて扱うシルクスクリーンの道具の使い方や刷り方を教え、子どもたちだけでも使えるように、という気持ちでお伝えしました。子どもたちが協力して刷り、思い通りに刷れた時にファミリー全員で歓声を上げて喜んでくれたのが印象的でした。

・ 最初は恐る恐るでしたが、次第に楽しく描けていたようです。大きい画面に自分たちの形を描いていくのはとても楽しそうでした。先生方もノリノリでした。

・ アングルも距離も気にせず、自分の視線で撮っているのが、子どもらしくて良いと思いました。

・ 子どもたちが自分たちで「楽しい」を発見していく様子を見るのは、こちらとしても微笑ましかったです。

・ 子どもたちが撮ることで、その友達のより自然な表情を撮れるので、良いと思いました。

・ 子どもたち主導の企画ができると良いと思います。大人のためではなく、純粋に子どもたちの思い出として楽しめるものになってほしいです。