中部

2017年1月-2月

静岡県浜松市立元城小学校

明治6年、第一番小学校としての開校以来これまで144年間に渡って浜松市の街の真ん中で、多くの卒業生を輩出してきた元城小学校。「現在、過去、未来 ~ありがとう 元城小学校~」というテーマを決めて、感謝の気持ちを込め、学校の壁や窓ガラス等に、思い出の絵を描きました。制作にあたっては、在校生や卒業生、保護者、地域の方に参加してもらい、隣接する浜松市美術館の飯室館長や浜松学芸高校美術課程の皆さんなど専門家による描画指導も受けてアート感覚の作品を描きました。

01校舎の思い出ギャラリー

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02先生・関係者インタビュー

(後列左から)種吉様、内田様、内山様、竹尾様、倉崎様、山本様、中島先生、齋藤様 (中列左から)瀬下先生、坪田様、秋山様、鈴木様 (前列左から)田中様、中村校長先生、杉浦様、米本様、松下様、鈴木様

小学校の歴史についてお聞かせください。

元城小学校 中村校長先生元城小学校は、明治6年に「第一番小学浜松学校」として開校して以来144年の歴史があります。その間、多くの卒業生を世に送り出しましたが、「しろばんば」などを書いた井上靖や歴史学者、坂本太郎なども学んでいます。昭和20年の浜松大空襲で校舎が焼失し、昭和23年に、現在の浜松城二の丸跡に「元城小学校」として移転、復興しました。その後、国語教育の研究校、キャリア教育の推進校として浜松市の中心地で先進的な教育活動に邁進してきました。しかし、近隣の北小学校、中部中学校と一緒になり、小中一貫校の浜松中部学園に生まれ変わるため、平成29年3月31日をもって閉校となります。これまで御支援いただきました皆様に深く感謝申し上げます。

「校舎の思い出プロジェクト」を行うことになったきっかけについてお聞かせください。

元城小学校 中村校長先生ある新聞記事に、このプロジェクトが取り上げられているのを見た本校3年生から、学校に「ぜひ元城小学校でも開催できないか」という手紙をもらいました。早速、プロジェクトに連絡させてもらい詳細について聞くと共に、職員及びPTA、自治会等で構成される閉校委員会で協議し、了解を得ました。そして、下絵制作や描画指導などについては、浜松学芸高校美術課程の皆さんの協力を得て、PTA行事の一貫として実施することができました。

PTA副会長 大石様このプロジェクトを行うことを聞いて、大掛かりなアートにし、地域の人たちを巻き込みたい。実行するからには、美しいものにしたい。そんな思いが湧き上がりました。地域の高校生や先生方の協力もあって、納得のいくものができ、大変誇らしく思います。色々な人たちが携わることでつながりができ、表現の無限性を感じるプロジェクトだと思っています。関係者の皆様に感謝いたします。ありがとうございました。

「校舎の思い出プロジェクト」のサポートプログラムはいかがでしたか?

浜松学芸高校美術課程 瀬下先生このようなプログラムや資材のご提供、ノウハウなどのご指導があればこそ実現するイベントだと強く実感いたします。また丁寧にご相談にのっていただき大変助かりました。 このイベントは参加した児童や高校生、保護者、教員にとって特別な時間を共有できる意義あるものでした。元城小を母校とする児童や保護者の方々にとっては強く記憶に残るクロージングイベントの一つになったのではないかと想像いたします。

PTA副会長 米本様ぺんてるの豊富な色の画材に、小学生の子どもたちは大喜びでした。ほとんどの子がアクリル絵の具を使うのが初めてでしたが、みんな上手に壁に色を塗ることができました。 一眼レフのカメラは、6年生の担当で、手にとった子は、高級なものだと感じ、大事に扱っていました。物を大切にすることも学べました。ありがとうございました。

特に印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。

浜松学芸高校美術課程 瀬下先生下記の質問にもあるように「生活空間の中に描く」という行為は常識を覆し、参加した高校生や教員にとって非常に楽しいものでした。描かれた絵の捉え方は人それぞれだと思いますが、楽しい空間になったと感じます。学校に戻り写真等で校長などに報告すると高校の壁にもどうか?という話が出るほどでした。

PTA 田中様参加していただいた皆さんが、楽しく描いていたのが印象的でした。注意していても、移動するだけでどこかに絵の具がついてしまうものなんだということがよく分かりました(笑)。お手伝いいただいた浜松学芸高校の生徒さん、先生方に本当に感謝です。

壁画のテーマはどのようにして決められたのですか。

浜松学芸高校美術課程 瀬下先生歴史ある元城小には、ここを母校とする児童や多くの教員・様々な行事や思い出がつまっておりほがらかで楽しい時間があり、それは未来へも続いていく、と想像しました。また、子どもが持つ明るさと元気さ表したいと考えました。

学校の壁という本来描いてはいけない場所に、初めて子どもたちが描いていくときはどのような反応でしたか?

浜松学芸高校美術課程 瀬下先生最初はためらいもあるようでしたが、書き始めてしまえば大きな壁に描く楽しさがわかり集中して黙々と塗っていく、もしくは友達と楽しそうに塗っていく姿が印象的でした。またある児童が「明日から5年生はこんな教室で勉強できていいなあ!」と心から言っているのを聞き、嬉しく思いました。

PTA 松隈様全く躊躇なく楽しんでいたように見えました。天真爛漫な子が多く、本当に良い子たちです。

PTA 松下様「本当に描いていいの?自由に描いていいの?」と驚きと興味がまざった言葉が出ました。日にちが近づくにつれ、楽しみというか、“思う存分描きたい”という気持ちに変わっていきました。当日は、“想い出を校舎に染みこませる”気持ちで描いたそうです。

子どもたちが撮影した写真や、撮影している様子をご覧になっていかがでしたか?

元城小学校教務主任 中島先生参加した児童、保護者の皆さんがペイントしているときの、とても良い表情が撮れていて、熱気溢れる当日の様子が伝わると思いました。また、学芸高校の生徒の皆さんが、児童に塗り方をアドバイスしている様子などは、とてもほほえましく思いました。撮影した6年生の頑張りに拍手を送るとともに、カメラの提供や6年生への指導をしてくださったキヤノンマーケティングジャパン関係者の皆様に感謝申し上げます。

保護者や卒業生、地域住民の皆さんの反応はいかがでしたか?

PTA 坪田様校舎に思い出の1ページを直接書いて記憶に残すという経験のないイベントに、子どもたちだけでなく保護者や卒業生にも話題になり、とても素晴らしい体験、思い出となりました。

PTA 齋藤様各年代の方々が参加、見学にお越し下さいました。友達同士、親子でひとつの作品を創りあげていく風景は心に残るものになったと思います。

今後、「校舎の思い出プロジェクト」を多くの小学校にて展開をしていきたいと考えております。 このプロジェクトに今後期待することや、メッセージがございましたらお聞かせください。

PTA会長 杉浦様児童、保護者、学校関係者、OB・OG、地域の皆さんと、多くの方々が一緒に一つのアート作品を体験して描く良いイベントとなりました。これからもペイントアートを通して、全国の校舎に思い出をつくってください。ありがとうございました。

浜松学芸高校美術課程 瀬下先生小学校に限らず、空き店舗や落書きのある壁・動物園など施設の汚れた壁の美化などにも使えたらどうだろうか、と考えました。また、美術高校などと共同し画材のご提供をいただいて制作する今回のような方法は、各地の美術高校などが関心を持つのではと想像します。もし高校の方で運営に使用したデータ等必要でしたら、参考までにお送りいたします。最後となりましたが、このような貴重な機会と潤沢な画材のご提供をいただき、本当に感謝いたします。今回参加させていただいた学芸高校美術課程を代表してお礼申し上げます。ありがとうございます。