ぺんてるモノ物語

思いのままに描ける筆ペン “あのミルキー”が「ミルキーブラッシュ」になるまで

思いのままに描ける筆ペン “あのミルキー”が「ミルキーブラッシュ」になるまで

突然ですが、みなさんのご自宅に筆ペンはありますか?その筆ペンは、いつどのような目的で購入したものですか?
きっと多くの方は「ご祝儀袋に名前を書くときに必要だったから」「年賀状の宛名書きに使いたくて」と購入し、今はペン立てにひっそりと眠っているのではないでしょうか。

書道文化のある日本では「筆=美文字」のイメージが強く、かしこまった場で綺麗に書くことについとらわれがち。でも、海外に目を向けてみると、筆はコミックアートやハンドレタリングなど“描く道具”として表現の場でも親しまれているのです。そんな筆ペンの可能性をもっと訴求したいとの想いから誕生したのが、2022年9月発売の「ミルキーブラッシュ」。今回は、女性ならではの「かわいい」を共通言語に進められたという開発秘話についてメンバーのみなさんにお話を伺いました。

ミルキーブラッシュ担当メンバー

  • マーケティング担当/桝谷(写真中央)・堀江(写真左)
  • 企画担当/高藤(写真左から2番目)
  • デザイン担当/三島(写真右)・梅谷(写真右から2番目)

01「ハイブリッドミルキー」の持つかわいさが、筆ペンを自由にする。

1996年にぺんてるから発売された「ハイブリッドミルキー」。当時のボールペンといえば、黒・赤・青といった単色が主流だった中、ミルクを混ぜたような不透明なパステルカラーゲルインキのボールペンは、これまでの「白い紙に書く」というボールペンの常識を覆し一大ブームに。黒い紙や写真の上にスラスラと書くだけでキュートなニュアンスを生み出すことから、当時女子中高生だったみなさんの中には「私も一本持ってた!」という方も多いのではないでしょうか。

1996年発売当時のチラシ

そんなハイブリッドミルキーの色合いはそのままに、ぺんてるの十八番とも呼べる筆ペンに仕立てた製品こそが、今回の「ミルキーブラッシュ」です。

パステルインキの筆ペンを製品化したいというお話は、いつ頃からあったのでしょうか?

桝谷もう5年以上前ですね。コミックアーティストの方から筆ペンは人気が高く、海外からはずっと要望があったんです。

高藤毛髪の艶など、ハイライトを描くために使う白は、特に要望が強かったですよね。

堀江国内でも漫画家さんから「しっかり色を塗れる白の筆ペンが欲しいな」というお声もチラホラあったのですが、製品化する上で、なかなか難易度が高く……。

高藤下地の色が透けずにしっかり塗れる「カバー力」を実現するには、染料インキではなく、顔料インキを使わなければならないんです。でも、顔料インキは粒子が大きいため、筆タイプのペン先からインキを出すのが難しくて。

桝谷当時は技術的な部分で話が進まなかったんです。でも、2020年に発売された、染料×ラメ顔料のインキの筆ペンである「デュアルメタリックブラッシュ」の構造を応用すれば実現の可能性が見えそうだということで、製品化の話が進んでいきました。あとは何よりファンのみなさんからの「欲しい!」という声が、新製品開発の後押しになりましたね。

最初からハイブリッドミルキーの色味で作ることは決まっていたのですか?

桝谷実はそうではなくて、筆ペンで新製品を作ろうと考えた結果、「ミルキーの色味で筆ペンができたら素敵だね!」という話になったんです。

高藤ぺんてるらしい独自の色で筆ペンを作ることがおもしろいというのが根底にありましたよね。

桝谷あとは、今、ぺんてるでは、「Pentel Arts」という「書く、描くことそのものの価値を広める」活動を発信しているのですが、「ミルキーブラッシュ」はその世界観を体現する製品だなと。日本で筆ペンというと“上手に綺麗な文字を書くモノ”というイメージがあると思うんですが、海外に目を向けると全然そんなことなくて。アイライナーも筆ですし、絵を描くときも筆を使うことが多いですよね。筆ってもっと気軽で自由なものであるべき、って思っています。

Pentel Artsとは?

マーケティング担当 桝谷

確かに!筆は少しハードルを感じてしまいますよね。

堀江自由に書けるツールなのに、どうして筆ペンになると急にかしこまってしまうんだろうなと。その部分は私たちもまだ魅力を伝えきれていないし、世の中にも広まっていないところがあるなと感じていました。

桝谷海外の多くの国ではどちらかというと「筆=画筆」のイメージが強いので、日本よりももっと自由に使っているように感じています。2015年ごろからカリグラフィーやハンドレタリングの流行が加速して、日本でも定着しつつあり、それらが筆ペンの可能性を広げる後押しにもなりました。

堀江絵の具ですと、パレット・バケツが必要ですが、筆ペンだと一本でサッと書けることもあり“書くだけでなく描く”にも使われているんですよ。

三島でも、実際には絵を描くってすごくハードルが高いと感じる人が多いんです。社内でも「試し書きどうぞ」と言っても、プレッシャーを感じちゃう人ばかりで。でも「だからこそ、ミルキーブラッシュは試しに書いてみて!」と私は思います。

桝谷みなさんこぞって「描きたい気持ちはあるのよね」と言うんですよ。アートとか絵を描かなきゃと意識せず、まずはミルキーブラッシュでちょろちょろっと丸を描くことから始めてもらえたら嬉しいですね。

三島そうそう!落書きの延長線上みたいな感じでね。

堀江実際、その想いがそのままメインビジュアルにも反映されていますよね。

メインビジュアル内の丸やドット、楽しげな筆跡はミルキーブラッシュの筆跡を表現したもの。何気ない・ラフな筆跡には、ぜひこんな風に自由に描いてみてほしいという想いが込められている

三島私は最終的にいろんな意見をビジュアルに落とし込む役割なので、そういったエッセンスや想いは反映したいと思っていました。メインビジュアルの背景として使用しているカラーペーパーは、実際に梅谷さんと一緒に色々な質感の紙を選んで、撮影をした写真を使っています。

デザイン担当 三島

梅谷紙の重なりの微妙な筆跡の段差みたいなところも作り込みましたよね。誰にも気づかれないような、そんな細かい工夫もしているんです。

推敲を重ねたビジュアル案。ラフで楽しげな気分を表現するには?を何度も検証したという

三島インキ自体も重ね塗りできて、色々な紙に書けるという「ミルキーブラッシュ」強みが、売り場でちゃんと伝わると嬉しいですね。

ちなみに色味の展開はなぜ8色なんでしょうか?

三島「ハイブリッドミルキー」は7色で展開されていたのですが、今回の「ミルキーブラッシュ」は姉妹品である「デュアルメタリックブラッシュ」に合わせて8色展開にしたかったんです。追加の1色を何にするかもメンバー全員で悩みました。

高藤ミルキーらしさとは?と、何度も会話を重ねて、使いやすさ、色味同士の相性の良さから検討をしていきました。ハイブリッドミルキーとのつながりは切っても切れないので、既存の色と一番協調性があるのはどれかなと考え、最終的にパステルミントグリーンが選ばれました。

企画担当 髙藤

桝谷ミントグリーンは最近では洋服や雑貨でもよく見かけるメジャーな色になりつつあります。何よりも…ミントグリーンって、他のどの色とも合うんですよ!!!

梅谷愛が強い(笑)。

「筆ペン」はもっと自由に気軽であっていいのでは?そんな想いとファンの声が合致して始まった今回のプロジェクトでは、自分たちが本当に欲しいと思える製品を具現化したといいます。描きたい気持ちに寄り添い、気軽に、自由に描ける一本。そんな新たな筆ペンの可能性を広げてくれる「ミルキーブラッシュ」はメンバーのチーム力にも秘訣があったようです。

02常に「かわいい」が飛び交う現場!考えることが同じだった最強チーム。

てっきり、かつてのハイブリッドミルキーユーザーを狙っていたのだと思っていました。

高藤あえて設定するならくらいの気持ちで一応ターゲットは20〜40代としているんですが、ハイブリッドミルキーのユーザーだった人っていうのは、実はあまり意識していないんです。

梅谷パステルカラーと一口に言っても、ティーン向けの「ゆめかわ」や、もうちょっとシックな「かわいい」もある。その辺のイメージの共有をみんなでやってきましたね。コンセプトを考え始める段階からみんなで一緒にやったので、共通認識を持った上で走っていけたのかなと思います。

デザイン担当 梅谷

三島最初は、どんな人がどういうシチュエーションで使うかというキーワードを付箋に書いて、バーッと貼っていきましたね。DIYが好きな主婦の方や、ホビークラフトが好きな人といったペルソナを決めていくと、なんとなく20代・30代以上の女性に絞られていったのかなと。

梅谷贈り物に手紙を添えたりするときに、ミルキーブラッシュでちょろっと書くとか。

三島あとはステイホームを楽しむというのもありましたね。ホームパーティーで紙皿や紙コップにデコレーションをするのが好きな人、みたいな感じで、どんどん使用するシーンを想像していって。

高藤誰一人妄想を止めることなく、みんなでどんどん広げていきましたね(笑)。

桝谷逆に使う人が絞れない製品なので、女性だけじゃなく、男性も。もっというとあらゆる世代の人に使ってほしいなと。

年齢や性別で区切るというよりも、ライフスタイルで分けるみたいな?

全員そうです、そうです!

桝谷このときに出た妄想が「塗って重ねて心ときめく」のキャッチコピーに繋がってくるんですよ。

三島「満たされる」とか「ハッピー」とか、コピーを色々考えていたら、一人がボソッと「心ときめく」って言って。

梅谷そのワードが出たときには「わー!それだー!」とみんなで沸きましたね(笑)。

三島今回のチームメンバーは、それぞれ普段は全く違う仕事をしているのに、自然と思っていることや感覚が一緒だなと。

桝谷確かに。普段の仕事内容も違うし、趣味も違う。それなのに、こんなに意見が合うことが不思議でした。

梅谷高校で同じクラスになったら、もしかしたら同じグループじゃないかもしれないですよね(笑)。

全員確かに(笑)。

「かわいい」は毎回キーワードだったのですか?

桝谷自然と出ちゃうんですよね。サンプルが出来上がるたび「かわいい!」って。

高藤この「かわいい」の感覚は、なかなか男性には伝わらないこともあって(笑)。

桝谷軸のサンプルパターンが何種類かあがって、開発チームの男性陣に「どれがかわいい?」と聞くと「どれも一緒に見えます」って!

高藤この「かわいい」という感覚を共有するのはなかなか難しかったかもしれませんね。インキに関しても、カバー力があってインキの色がちゃんと出て…とかなりこだわっていたので、そんな私たちのリクエストを、開発担当者が苦労しながらも見事に実現してくれました。

桝谷カバー力やサラサラの筆記感、速乾性、定着性などの要素があるのですが、こちらを上げるとあちらが下がるという……。かなりの数、試作を繰り返したので正確には覚えていないのですが、サンプル番号が183・208・261とあるので、恐らくこの回数を試作してくれたんだと思います。

高藤開発中から「難易度が高い」と言われていましたよね。

三島軸のデザインも試作品は紙の段階で100回以上、フィルムの段階で60回以上は検証しました。ベースのクリーム色やドットの濃さだけでも、相当数やっています。微妙な違いを確かめるために、全部一度印刷して、紙を切って、軸に巻いて、という作業を繰り返しましたね。

サンプル数が試行錯誤の苦労を物語る。何度も紙やフィルムに出力しては検証したという軸デザイン

今回の軸柄はドットですよね。これは何か意図があるんでしょうか?

三島「書くことにハードルを感じて欲しくない」というのが伝わるデザインにしたかったので、それが一番伝わるモチーフとしてドットにたどり着きました。実際に、私が手描きした筆跡をスキャンして調整し、ミルキーブラッシュの筆跡を表現しているんですよ。

ドット柄もよく見るとさまざまな筆跡がある。中身のインキカラーがわかるように、透明にするなど細かな工夫も

筆をもっとラフに、気軽に楽しんでもらえるように。そんな想いから生まれたミルキーブラッシュ。手軽さ・かわいさを追求した製品のその裏には、ぺんてるならではの技術力や品質の強みも。「書道をやっていた方が使っても美しい文字が書ける」ように、「テーパー加工」と呼ばれる技術によって、絵も文字も適切に書けるコシをキープしたとのこと。そんなクオリティと共に至る所に詰め込まれた“かわいい”こそが、ミルキーブラッシュの売りだと言います。

 ※「テーパー加工」は、ナイロン繊維を先端に向かって徐々に細くしていく加工技術のこと。ミルキーブラッシュや、ぺんてる筆、アートブラッシュなど、ぺんてるのブラッシュ系の製品は、穂先の1本1本にこの加工を施すことで、筆先の形状が作り出されている。

03人の心は数値化できない。出会いのインスピレーションを大切にした商品開発。

桝谷私は売上の数値など、日々数字と向き合うマーケティンググループに所属していますが「その数字って本当に拠り所になるのかな?」と思うことも時々あるんです。特にアートの世界は、人の心に近い部分ですから。もちろん人を説得するときには根拠が必要ですが、人の心までは数値化できないと思うんです。今回はそういう意味でも、数字に頼らない新しい視点の開発ができたのかなと。

三島ユーザーさんは数字で判断して購入する訳ではないですからね。最初の出会いって「かわいい!」とか「描いてみたい!」とか、そういう感覚的なところだと思います。

桝谷そうそう、何を描いてもかわいいんですよ(笑)。ミルキーブラッシュは、紙袋や包装紙とも相性がいいですし。

梅谷ダンボールに書いてもかわいいですよね!

高藤姉妹品のデュアルメタリックブラッシュとの組み合わせもかわいいですよ。

梅谷もう、とにかくかわいい。女子が5人集まって全員がかわいいと思ったら、きっとユーザーさんにも共感していただけるだろうと。間違いないですよね(笑)。

クラフト紙やカラーペーパーなど、質感のある紙との相性も抜群。顔料インキならではの重ね塗りを存分に楽しめそう

では、そんなミルキーブラッシュを、どんな方にどんな風に使ってもらいたいですか?

堀江筆ペンユーザーは全体的に年代が上がっている傾向にあるので、個人的にはミルキーブラッシュを若い世代の方に使っていただいて、これをきっかけとして他の筆ペンも使ってもらいたいという希望があります。年賀状離れも進んでいるので、そういうシーンにも使うきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。

マーケティング担当 堀江

三島筆で書くことに普段から慣れ親しんでいる人にも今まで通り使ってほしいですが、習慣がない人にこそぜひ手に取ってもらいたいなと。

桝谷「この色試してみたい!」というところから興味を持っていただいてもいいんですよ。そういう気持ちから触ってもらえれば。例えば、普段の洋服はモノクロが多いけれども、自宅の雑貨やパジャマはやさしい色味が好きという人が、プライベートな空間でリラックスして使うことも妄想していましたから。

高藤“気張って使うモノじゃない”というところがポイントですね。

筆ペンのかしこまった感じとは違いますね。

桝谷個人的には筆系の製品は筆圧ひとつで文字の質感が変わるというか、個性や味が一番出るものだと思っています。唯一無二の作品が作りやすいですし、人に寄り添う道具だなと思っているので、もっとその表現の面白さを伝えられたらいいですね。

今回、国内と海外で同時発売されたミルキーブラッシュ。「書道・アートとカテゴリーを分けるのではなく、コンセプトから製品の仕様や色味など双方の市場に向けて統一して打ち出すことは珍しい」のだそうです。「書く」と「描く」の両方にアプローチできるミルキーブラッシュは、ジャンルも、国境も、性別も、年齢も超えて、たくさんの方に楽しんで使ってもらえる一本になっています。開発メンバーの「かわいい!」が詰まったこの筆ペンからどんな用途や楽しみ方が広がっていくのでしょうか。手にとっていただいたユーザーさんの反応や作品も、今後がますます楽しみです!

「MILKY(ミルキー)」のポーズで最後に一枚

ミルキーブラッシュ製品画像

ミルキーブラッシュ 

塗って重ねて心ときめく、パステルカラー筆ペン。全8色。

ミルキーブラッシュへ