ぺんてるモノ物語
心躍るマットなカラーが世界を席巻!?あそび倒すボールペン「MATTEHOP」開発秘話/ #1マーケティング編
文具に限らずファッション・コスメ・インテリアと、身の回りのさまざまなモノにおいて長らくトレンドに君臨する“くすみカラー”。控えめで馴染む色だからこそ、TPOを問わず使いやすい。そんな色味は、強い自己主張よりも周囲との調和を意識した、現代の世相を反映しているのかもしれません。
しかし2023年8月30日に発売されたマットカラーインキボールペン「MATTEHOP(マットホップ)」は、そんなトレンドを大きく打ち破るインパクト大の新商品。そこで今回は、時代を牽引する、これからのスタンダードを目指したという開発メンバーの面々に、お話を伺いました。
MATTEHOP担当メンバー
写真左から
・マーケティング担当/小平
・デザイン担当/森田
・企画担当/髙井
01手描きはZ世代の愛情!?コミュニケーションツールとしてのカラーペン。
「ボールペン=白い紙に黒い文字を書く」。そんな概念を大きく打ち破ったのが、1996年に発売された「ハイブリッドミルキー」。そこから、20年以上経った2017年に国内で発売されたラメ顔料ボールペン「ハイブリッドデュアルメタリック」。ボールペンを一気に“描くツール”へと押し上げ、好評につき、18年、19年、20年、21年と、数年にわたり限定発売されました。
そんなハイブリッドデュアルメタリックの流れを汲み開発を進められた製品が、高発色・高隠蔽をキーワードとした今回のMATTEHOP。デコ文化や推し活との相性も抜群とあって、Z世代の心をジャックしたいと考えている模様です。
くすみカラー全盛の現在において、なぜこの企画がスタートしたのですか?
小平くすみカラーもかわいいですが、閉塞感や制約があるコロナ禍において、もっと元気なパワーが絶対に必要だと思っていて。カラフルなペイントマーカー系の売り上げの伸びも確認できたので、MATTEHOPのような製品を求めている人はいると信じて開発を進めていました。
マーケティング担当 小平
森田 Z世代は色紙書きなどでカラーペンを使うというのがハイブリッドデュアルメタリックで証明されていて。その成功体験を活かそうといった流れで始まりましたね。ハイブリッドミルキーやハイブリッドデュアルメタリックといったブランドの蓄積があってこそのMATTEHOP。最初がMATTEHOPだったら、こんなに弾けた製品はできていなかったかもしれません。
デザイン担当 森田
髙井当初の構想ではZ世代がターゲットというところまではバチッと決まっていなかったのですが、試作品の段階から色のインパクトがあったので、こういうパワフルなインクはZ世代がターゲットかなと。
企画担当 高井
小平ハイブリッドデュアルメタリックは数年にわたり限定品として発売したのですが、そういう製品を待っているZ世代の子たちがいるというのを確認ができたことも、開発の原動力になりましたね。企画のバックボーンにはZ世代があったので、生の声を確認するといった意味で、女子高生の皆さんを呼んでグループインタビューもさせていただきました。おもしろかった〜!
森田グループインタビューのときに「普段からデコレーションをしますか?」と聞いてみたところ、皆さん「しません」って答えるんですよ。けれども話をよくよく聞いてみると、放課後に落書きしながらお喋りをしたりペンケースをデコったりと「なんだ、やってるじゃん!」みたいな(笑)。デコレーションというとハイレベルなものをイメージするみたいですが、実際、落書きやデコは彼女たちの日常の中にしっかり組み込まれていたんです。
小平誕生日を祝うJKアルバムやロッカーサプライズっていうのがあるらしく。そういうイベントのときには、クラスの中でカラーペンやチェキを持ち寄っているみたいで。みんなで作ってお祝いして、写真を撮影してSNSに投稿する。ここまでの一連の流れが、彼女たちの楽しみ方というのも知りましたね。
森田あとは卒業シーズンや誕生日だけじゃなく、日常的にあそびを入れつつ楽しんでいるなと。誰かが持ってきたペンのセットケースを、みんなでシェアしてあそぶといったシーンが、より明確になりました。
髙井グループインタビューでも色々な材料を用意して、そこにMATTEHOPを使って好きに描いてもらったのですが、うちわなどのコミュニケーションツールを選ぶ子が多くて。一人で黙々と描くよりも、みんなで楽しくといったコミュニケーションとマッチするんだろうなと思いましたね。
森田そのときに彼女たちから“高発色”という言葉が出てきたんです。開発時には高彩度・高隠蔽と言っていたのですが、ユーザーさん向けには高発色の方が伝わるんだなというのを教えてもらいました。
小平私は彼女の中の一人が「手描きは愛情……」ってボソッと言ったのがすごく印象的で。そこから会社の中での方向性もまとまっていった気がします。
髙井私の時代も思っていることを手紙に書いて交換するとか、書くこと自体がコミュニケーションだったなぁと。そういうリアルな繋がりが、今の時代こそ大切なのかなと思います。
森田“〇〇ちゃんへ”みたいに好きな友達の名前を書くときにも、気持ちを乗せているんだろうなぁと感じました。そういえば、高井さんはインタビュー後の資料に「手描きは愛情」って書いていましたね(笑)。
パワフルなZ世代に刺さる高発色なマットカラーインキを搭載したMATTEHOP。インキの色味同様、ボールペン本体のカラーリングやパッケージ、さらにはキービジュアルにも、楽しさやおもしろさを言葉や説明に頼らず、視覚に訴えかける工夫が詰め込まれています。その大きな理由は、世界共通ブランドとしてMATTEHOPを送り出すため。世界を見据えた一本だからこそ、その舞台裏には悩ましい問題もあったようです。
02「MATTEHOP」は世界共通ブランド。国内外で売るために工夫した感覚的要素。
今回は「オリジナルセット」と「スイートセット」と、2種類の7色セット。全14色の「オリジナル+スイートセット」が発売されるんですよね。
小平はい。このオリジナルセットの7色にピンクを加えた全8色は、実は既に海外で販売されているんです。海外では8色のみの展開でスタートしましたが、国内では当初から14色で展開するという目論見があったんです。セット品での提案がいいというハイブリッドデュアルメタリックでの知見があったので、国内では色が揃った段階で発売しようと。
森田輸入雑貨のようなデザインに需要があることに気がついていたので、キービジュアルも世界共通ではあるものの、国内向けにあえて海外っぽさを出したところも狙いです。
小平従来のキービジュアルのように使用シーンや筆跡を目立たせるのではなく、アパレルの広告っぽいですよね。惹きつけられる感じと、彼女たちの日常にある落書きがうまくミックスされているんです。
森田キービジュアルの担当デザイナーには「ターゲットはZ世代の女子高生だけれども、いわゆるキラキラとしたプリンセスキャラが好きな子ではなく、強いモンスターキャラが好きな子なんです」と資料にまとめてイメージを伝えましたね。
髙井これで渋谷をジャックしたい(笑)。
小平普段なら「もっと製品を目立たせて!」などと言われるんでしょうが、MATTEHOPの軸や考えをきちんと共有していたので、今回は本当に揺らがずよくやったなと。意志を貫き通すことは大変でしたが楽しかったです。
森田パッと見ておもしろそうなのか、という感覚的なところが大事なんですよね。MATTEHOPは世界共通の強いブランドにしていきたいです。
小平けれども私からしたら世界共通だからこそ、ネーミングがとにかく大変でしたね。製品のコンセプトをしっかり表現していて、かつ世界中どの国でも使えるオリジナルのネーミングを考えるのにはとても苦労しました。千本ノックみたいに考えて考えて、また考える。本当に打つもの打ったという感じで、どういう経緯で決まったのかは思い出せないですが……。インキの性能であるマットと、心弾むような気持ちのホッピングを掛け合わせたことは間違いないです(笑)。
森田製品コンセプトの「実在級インパクトで、描けばゾッコン強烈ハッピー!」というワードも、ネーミングと同じく情緒的なところとインキの特性をどちらも言えるワードをみんなで探した気がします。高発色・高隠蔽という三文字熟語を並べても伝わりにくいので、そこをどう言葉にしようか迷いましたね。
小平描くとステッカーみたいにグイグイ前にくるところを“実在級インパクト”という言葉で表現しています。
ボールペン本体のデザインは、どこにこだわりましたか?
森田本体自体は脈々と受け継がれるお馴染みのハイブリッドの形ですが、軸の色とクリップの印刷部分が少し異なります。クリップに関しては画面からはみ出すくらいの主張の強い吹き出しから「あそんでいいんだよ!」というのが感覚的に伝わればいいかなと。白地に黒文字が一番目立つことが発見だったので、それを採用しましたね。
森田このクリップについては、これまでハイブリッドというブランドの冠を活用してハイブリッドデュアルメタリックを展開してきたので、実は今回も最初は「ハイブリッドマットホップ」と表記する想定だったんです。ただ、MATTEHOPの位置付けが徐々に明確になる中で「MATTEHOPはハイブリッドシリーズじゃなく、ひとつのブランドとして自立していきたいものだよね」という話になりました。
小平私はこのクリップのデザインが本当に大好物で。グッズをつくりたい(笑)。
森田軸のカラーリングに関しては、製品の一番の特徴は高発色のインキという部分なので、それをどうやって視覚的に伝えようかというのが考えどころで……。たくさん案を出したものの「絶対これでしょ!」と割とすんなり決まりました。
セットのパッケージも世界共通ですか?
森田もともとセット商品は国内のみだったのですが、海外から「このデザインのままでいいから欲しい」という要望があったので、結果的にパッケージも世界共通です。
髙井SDGsなどの流れもあり、定番商品では初の紙パッケージなんです。私も初めてだったのですが、怖いもの知らずでチャレンジをした結果……。
小平今や髙井さんは箱マニアですよ(笑)。
まるでお菓子の箱のような紙パッケージを採用。箱のフタを開いて背面にくるりと回すと斜め置きも可能に。
髙井まずはお菓子の箱が参考になるんじゃないかと買い漁り、開封口の点線の入れ方の研究をしました。なかでも、輸送中は開かないけれども、消費者が開けやすい開封口を見つけ出すことが難題で……。食品やお菓子の箱をいろいろと集めて、日々研究を重ねました。今は開封口を見るだけで「あ、この点線は2mmピッチで入ってるな」と分かるようになりました(笑)。
森田デザインのポイントとしては、輸入雑貨感を出すために日本語を一切使っていないんです。パッと見ると、あたかも海外からやってきたような感じというのを狙いました。
髙井セット名のオリジナルというネーミングも、実は海外のお菓子ブランドから発想を得たんですよ。
お菓子のパッケージのように“つい手に取りたくなる”かわいさを詰め込んだMATTEHOP。思いもよらない楽しみ方が期待できるMATTEHOPだからこそ、日々のなにげない生活の中にあるアートの楽しみを提案する「PentelArts(ぺんてるアーツ)」との相性は抜群です。
03世界中にMATTEHOPPERを!何気ない落書きがアートになるインキの威力
MATTEHOPを手に取った方に、どんな使い方をしてもらいたいですか?
森田表現するとかアートというと敷居がどんどん高くなっちゃうので、ジャケ買いしてみたら「このペンってこんなに描けるんだ」という順番でいいかなと思っています。これまでは書き味にこだわる文具好きに向けてアプローチをしていたのですが、まずは見た目、楽しむのは後からといったアプローチでもいいんだ……というのは発見でした。
小平本当にそうですね。MATTEHOPにハマってすごいことをやり遂げる人もいると思いますが、大作じゃなくていいんです。グループインタビューの中でも、名前を書くだけでも彼女たちらしさっていうのが十分出ていたので。
髙井しかもぺんてるの製品って、こんなにポップなルックスなのにアーティストが使っても満足するインキが搭載されているんですよ。Z世代がターゲットではありますが、そこだけじゃもったいない。アート界にも広まっていったらいいなと思います。
小平私自身はアートが得意ではないんですが、毎週末に子どもと一緒にあそびながら使っていたらハマっちゃいましたね。あとは、Pentel Artsを推進している社内の方が、MATTEHOPで描くと褒めてくれるんですよ。彼女が自己肯定感をあげてくれるから、のめり込んだのかもしれません。
森田思っているよりもめちゃくちゃ描けちゃうんで、自己肯定感があがりますよね。
小平Pentel Artsの活動の中で自己肯定感というワードは大事なのかもしれないですね。
髙井 MATTEHOPを使う人たちを「MATTEHOPPER(マットホッパー)」と呼んでいるんですが、それも開発の過程で自然と出てきたというか。
森田堅苦しいルールは無用で「これ楽しいじゃん!」みたいなところを体現したい。それがMATTEHOPPER(笑)。
小平我々もしっかりMATTEHOPPERですね(笑)。
Z世代以外が使う際の、おすすめの用途はありますか?
森田MATTEHOPはメーカーがおすすめの使い方を教える……とかじゃないんですよね。とにかく買ってあそんでみてっていうのがお似合いの製品。そこから想像も出来ないような使い方に発展したら面白いなと思います。
小平そういえば、お菓子の箱への落書き!あれ最高だったよね。シックな箱の上にも意外にMATTEHOPが合うという発見があって。あとは実用的なところでいえば修正指示。色々と書き込まれた資料の中にMATTEHOPを使ったら、これが最新の情報というのが一目でわかりましたよね(笑)。
髙井私は勝手にオリジナルグッズを作って怒られました(笑)。けれども、ぺんてるのいいところですよね。製品に携わる人たちがどんどんあそびを広げて、最初のファンになるっていう。
小平さっきの自己肯定感の話じゃないですが、自分の名前を書いてみたり、シールに顔を描いてみたりするだけで気持ちが「ふふふっ」となればMATTEHOPらしいし、それこそPentel Artsに近づいていると思っていて。毎日の生活でちょっと気持ちがアガるところに携われたらいいなと思いますね。
社内のみならず、PR動画の制作に携わった外部スタッフの方々も、既にMATTEHOPPERになってしまったのだそう。Z世代を中心に、SNSでどんな使い方が拡散されるのか今から楽しみなMATTEHOP。たとえ絵が苦手であっても、MATTEHOPのパワフルな書き味が楽しさを広げてくれるため、まずはジャケ買いしてみてください!