ぺんてるモノ物語

“第三の修正具”、現る!? まるで修正テープのような超速乾幅広ペン先修正液「WHITESPEED」

“第三の修正具”、現る!?  まるで修正テープのような超速乾幅広ペン先修正液「WHITESPEED」

「あっ!書き間違えた」そんな時に重宝するのが、消したい文字をサッと消せる修正具ですよね。液タイプとテープタイプの二大勢力で構成される修正具市場において、ぺんてるとしては実に17年ぶりの発売となったのが“修正テープと修正液のいいとこどり”の新製品「WHITESPEED(ホワイトスピード)」です。

1983年にペンタッチボトル型の修正液を開発し、発売から40年以上の歴史を持つぺんてるが新たに送り出す、“第三の修正具”はどのようにして生まれたのでしょうか?ペンタッチ式でありながら修正テープのような使い心地を実現する新形状のペン先とは?従来品の1/2の速さで乾く秘密とは?プロジェクトメンバー5名にお話を伺いました。

WHITESPEED担当メンバー

写真左から

  • 研究担当(インキ)/倉賀野、内野
  • 研究担当(構造)/小出、桑原
  • マーケィング担当/堀江

01「“塗る修正テープ”を開発しよう!」 その一言からプロジェクトが本格的に動き出した。

 

 

ぺんてるとして17年ぶりの修正液の新製品発売ですが、なぜこのタイミングだったのでしょうか?

堀江ぺんてるの修正液はたくさんの方にご愛用いただき、長年にわたって高いシェアを維持してきました。しかしながら、ますますデジタル化が進む時代の中にあって、修正液市場は世界的に縮小してきています。また修正テープ市場に目を向けてみても、特に新しい機能を搭載した新製品は出ていないという状況もあり…。この修正液・修正テープ市場を私たちの力で再活性化したい、という想いが根底にあったんです。今回のWHITESPEEDが17年ぶりの新製品となるのですが、研究開発はその間もずっと継続していて、「“塗る修正テープ”を開発しよう」というアイデアが5年ほど前に持ち上がり、それが2023年12月についに発売されたという感じです。

“塗る修正テープ”とは、どんなアイデアだったのでしょうか?

内野修正テープのようにひと塗りで広範囲の修正ができる幅広のペン先形状、かつ超速乾の修正液を作りたいとアイデア会議で提案しました。そもそもペン先が幅広の修正液が市場には存在していなかったので、目新しさもあるんじゃないかと。

研究担当(インキ) 内野

倉賀野速乾性については、私が入社する2017年 より以前に内野さんが実現していたんです。修正液はカチャカチャと振ってから使うのでインキを均一にする必要があります。しかしそのような性質を持たせようとすると、塗った塗膜が厚くなり易く、その分乾くのに時間がかかってしまいます。内野さんの頭の中には速く乾いて、かつ、インキを均一にしやすくするための理想とするモデルがあったんですよね?

内野そうですね。速乾性だけを追求するなら、サラサラのインキにすればいいんです。そうなんだけど、実際に使えるものにするまでには、均一にしやすいインキにする必要があります。そのために材料の選定や組み合わせなど非常に繊細な検証を一つひとつ行い、理想とする修正液に辿り着くには結構時間がかかりましたね。

研究担当(インキ) 倉賀野

倉賀野まさに私は入社直後からその試験をずっと担当してきたんです。最終の試作品の番号が2128。つまり2128種類もの組み合わせを片っ端から試していたことになります!

小出そういえば倉賀野さん、以前腱鞘炎になってませんでした?

倉賀野はい! 毎日夢中になって試作品を振っていたので、気づいたら腱鞘炎になってました(笑)。今回、新しい素材もいろいろと試したのですが、その中で「これいけそう!」という素材がようやく見つかったと思ったら、それが供給停止になってしまって……。一から探し直しになったこともありました。

そんな開発期間を経て誕生したWHITESPEEDですが、実際に使ってみると修正した上からボールペンで書いても滑らかに書けますね。

内野それは修正液の塗膜強度が関係しているんです。強度が高いほど、上からボールペンなどで筆記しても滑らかに書くことができます。WHITESPEEDでは、この強度を上げるために、強化プラスチックの発想を取り入れ、従来の修正液には使用していなかった素材を配合しています。あとは、修正液の乾きとともに凸凹が少なくなり平坦になっていく「レベリング性」にもこだわりました。従来品はインキが厚い部分はなかなか乾きませんでしたが、今回は独特な幅広ペン先の構造と相まって一定の厚みでラインが引けるようになっています。

堀江まさに“塗る修正テープ”ですね。私は修正テープの上から書くときに穴が空いてしまうことが良くあるのですが。同じような経験をしたことがあるみなさんにぜひ使っていただきたいですね。

倉賀野再筆記がしやすいものを作りたかったので、 0.3mmのボールペンで書いても穴が空いたり削れたりしないように調整しました。

堀江修正液の色味も従来品とは違って、マットで紙と馴染む色合いになっていますよね。

内野修正テープと比べても紙の色味にフィットするような質感にしたかったんです。だからインキの色を上質紙やコピー用紙の白色度に合わせて調合したり、塗膜に細かい凹凸を付けマット調にしたりして消したところが目立たないようにしました。私の中の目標は、“打倒・修正テープ”でした(笑)。

紙色に馴染むマットな色合い。修正テープのようにひと塗りで修正が可能です。

当社従来品の1/2の速さで乾く超速乾インキだから再筆記もスムーズ。

修正液市場を牽引してきたぺんてるにおいて、修正液の研究に長年携わってきた内野さんが温めてきた幅広ペン先&超速乾というアイデア。その中には、市場で修正液と比べると約4倍の売り上げを誇る修正テープに勝る新製品を世に出したいという野望もあったようです。

02超速乾インキの特性をフルに活かす構造を求めて。 試行錯誤の末に辿り着いたカタチ。

修正ペンとしての構造も従来とは異なりますが、開発はどこからスタートしましたか?

桑原従来の修正液はジグザグを繰り返して修正していく必要がありましたが、WHITESPEEDが目指したのはひと塗りで修正できること。それならばベーシックなノート1行の中に筆記された文字を一度で修正できる修正幅4~5mmを目標に、約4.5mm幅のペン先にしようというところからスタートしました。

研究担当(構造) 桑原

小出幅広ペン先の修正液という考え方自体は20年以上前からあったようなんですが、なかなか形にならなかったみたいですね。このプロジェクトでもいろいろと試行錯誤をしました。最初に試作したモデルは残念ながらお見せすることができないのですが、なんとも複雑な形のペン先でしたね(笑)。

研究担当(構造) 小出

堀江そのモデルを持ってタイにモニター調査に行っていましたよね?

小出はい。タイでは修正液のニーズが高いんですよね。というのも、タイ文字には発音記号が付いていて、それを修正するのによく使うみたいなんです。なんでも修正液を一番使っている国だとか。

桑原タイでは、修正液を塗った後、修正ペンの後端でトントントントンとインキを広げて、速く乾かす文化があるみたいで。インキをトントン叩くので、修正塗膜はボコボコになるらしいですが。

一同(笑)。

小出タイではかなり速乾性が求められているため、インキの性能としてはマッチしていたと思います。でも、モニター調査ではペン先形状の存在感に目を奪われてしまったようで、「速く乾くのはいいけどね……」という反応でした。

そこから、どうやって現在の形に辿り着いたのですか?

小出当時の試作品と最終的なWHITESPEEDのペン先は形状としては全く異なるのですが、修正液の性能(隠蔽性や乾燥性)を生かすために最適な紙面とペン先の距離や、修正液をペン先から出す量など、これまでの知見を多く活かしています。

桑原また、修正液は乾いたインキがペン先に詰まってしまうと使いにくくなってしまうので掃除のしやすさが重要です。WHITESPEEDは、ペン先の構造をシンプルにすることで使用後の拭き取りやすさを向上させています。

小出従来の修正液ともペン先の見た目は違うんですが、先端を軽く押し付けることでインキが出る弁構造の部分など、従来品と変わらないところも多いんですよね。新製品で使い勝手が変わってしまうとユーザーのみなさんも戸惑ってしまいますから。変わらない安心感も大事なポイントだと思っています。

桑原ぺんてるの修正液は海外でも同じ形で販売されているので、「ぺんてるの商品だ!」と一目で分かるようにフォルムは大きく変えたくないという要望が社内からあって。だからこそ、従来と同じ形のキャップに、どうやってこの幅広のペン先を収めるかなど、課題はいろいろありましたね。

確かに見た目は既存のペンタイプの修正液と同じですよね。

小出外観の形状も、ペンの中で修正液を攪拌する撹拌体も、従来品と一緒です。撹拌体もいろいろ形状や長さは検討したのですが、従来品がなかなかよく出来ていて(笑)。結局は従来品が一番良いという考えに至りました。

マーケティング担当 堀江

堀江ただ、新製品感を出したかったので外装のカラーリングは緑にしました。ぺんてるの修正液は主に青ボトルがトレードマークとなっていますが、海外ではぺんてるの修正液のいろんな色の模倣品が出回っているため(笑)、模倣品に使われていない色を探して、この落ち着いた緑色になりました。

速乾性の高い修正液と、その液を幅広で均一に塗るという構造が組み合わさることで実現した、まさに“塗る修正テープ”。インキも構造もまったく新しい発想にもかかわらず、フォルムや使い勝手が変わらないからなのか、先行販売された海外でもWHITESPEEDは好意的に受け入れられたようです。

03直線も、曲線も、自由自在。 消すだけじゃない修正液。

WHITESPEEDに決まるまでネーミングは何案くらいありましたか?

堀江50案以上はあったかなと思います。

内野「マッハ」っていう案も出しましたね。

倉賀野ありましたね。めちゃくちゃ速く乾きそう(笑)。

海外での販売も視野に入れての英語でのネーミングですか?

堀江そうですね。先行して2023年の春ごろからアジア、オーストラリア、スイスなどで販売開始し、現在認知度を上げるべく頑張っています。国内では「17年ぶり」というキャッチフレーズがお客様に刺さったようで、「今さら新製品を出すの⁉」と面白がっていただく声もありました。

倉賀野修正液市場がどんどん縮小していく中での17年ぶりの新製品。売れてほしいですよね。海外だと修正液で絵を描く文化もあるみたいなので、文字を消すという従来の使い方に縛られずに使ってもらえたら嬉しいです。

堀江SNSなどで見ると、海外では修正液をウォールアートに使っていたりするんですよね。あと、プロスポーツ選手がバスの車体にサインするときにも使われていたり。

小出私もWHITESPEEDで絵を描いたりしてみたんですが、乾いた後の表面がフラットになるというのは画材としても使い勝手がいいなと思いました。フラットで見た目がとても綺麗に仕上がるんです。

桑原そうそう。均一な線が描けるので、私はレタリング風の遊びもやってみました。WHITESPEEDの上からMATTEHOPで描いてみたりと、修正用途以外でも使えそうです。

MATTEHOPとは?

内野ほかの白いペンよりも発色がよく、隠蔽力も高いので、その辺りもアピールしていきたいですよね。修正テープは直線のみですが、WHITESPEEDは曲線も描けるので、修正液の用途だけに限定せずいろいろな使い方をしてもらいたいなと。

桑原細かい部分を修正したいという海外からの要望もあったので、ペン先を縦向きで幅の狭い面を使ってポンポンとスタンプすれば、細かな箇所も修正できるようにしています。

ペン先を横向きで使うと約4.5mmの幅広スタイル。

細かい修正をしたい時は縦向きで使うことも可能です。

今回の新製品発売にあたり、みなさんどんな想いがありますか?

内野これまでで一番苦労した製品なので、ぜひ売れて欲しいですね。17年ぶりの修正液製品の新発売ですから、もしかしたらこれがぺんてるの修正液として最後の製品になるかもしれない。そんな想いで一生懸命作りました。

小出長年内野さんが研究を重ねてきた最高傑作の修正液ですから、なんとかして市場に出そうという想いが私にはありましたね。研究段階でストップして世に出ない製品もたくさんあるんですが、そうならないよう構造も遅れを取らないようにと切磋琢磨しました。

桑原私は入社して初めて携わったのがWHITESPEEDだったこともあり、発売したときは、ものすごく嬉しくて。ユーザー調査も兼ねて実家の母にも送ったのですが、喜んでくれました。身近なユーザーの満足度を実感できてよかったです。

倉賀野桑原さんと同じく、私も入社して初めてのテーマがWHITESPEEDだったので、特に思い入れがある製品です。

堀江ボトルタイプの修正液は昨年で発売40周年を迎えましたが、WHITESPEEDも同じように長くみなさんに愛してもらえる製品になればと願っています。

WHITESPEEDのルーツとも言える、青いボトルでお馴染みの修正液は2023年で発売40周年を迎えました。

17年ぶりとなる新発売の裏には、開発チームの粘り強い研究姿勢と市場を変えたいという想いがありました。修正液としてはもちろん、ホワイトマーカーのようにも使える発色のよさと隠蔽力も魅力のWHITESPEED。直線も曲線も思いのままに描け、プラスチックのようなツルッとした面にも使えるため、アートや推し活などまだまだ用途も広がりそうです。消したり、書いたり、描いてみたり。兎にも角にも、まずは乾きの速さと滑らかな書き味を実感してみてください!