関東

2016年5月-7月

東京都台東区立蔵前小学校

東京都台東区立蔵前小学校は、精華小学校、小島小学校、済美小学校の3校統合により、平成15年4月1日に開校しました。地域一体がエコを特色にした良好な教育環境と住宅環境に恵まれた、歴史と伝統のある小学校です。今回の改築により、児童の皆さん、保護者の方々、卒業生、地域住民の皆さんが学校に集まり、校舎に対する感謝の気持ちを思い思いに描きました。

01校舎の思い出ギャラリー

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02先生・関係者インタビュー

「校舎の思い出プロジェクト」を行うことになったきっかけについてお聞かせください。

針谷校長先生校舎の移転・改築が決まり、何か思い出に残るようなイベントができないかと考えていたところ、ぺんてるとキヤノンマーケティングジャパンが「校舎の思い出プロジェクト」という事業をされていると、堀江先生から話をもらい、打ち合わせをさせていただきました。PTAの保護者の皆様はじめ、先生方にもご賛同いただき、「校舎の思い出プロジェクト~ありがとう蔵前小学校校舎~」としてイベントを立ち上げました。

佐藤周作さん蔵前地域に2015年オープンしたシェアアトリエ「縁縁Creative Base」の活動の中で、御徒町~蔵前~浅草橋のエリアで行われているモノマチの実行委員として動いていた時に、蔵前小学校の「校舎の思い出プロジェクト」に出会いました。アトリエの1階にある蔵前4273の常連さんで、毎朝校舎の前で警備をしている地域の方の推薦でもあります。

校舎の思い出プロジェクト」のサポートプログラムはいかがでしたか?

針谷校長先生全校児童が、校舎に感謝の気持ちを描くというペイント活動を考えましたが、準備する画材の量や刷毛の本数などに苦心しておりました。そんな時、ぺんてるとキヤノンマーケティングジャパンが「校舎の思い出プロジェクト」としてご協力してくださることになり大変有難く思いました。

堀江先生全員が楽しく描けるよう、すべての学年で、ぺんてるからの絵の具と筆を使用し、壁画制作を行いました。1年生や2年生の中で、絵の具が扱うことが難しそうな児童も、今回はボランティアスタッフの手助けもあり、のびのびと楽しそうに壁面を描いていく様子が伺えました。

佐藤周作さんなかなかできない体験を子どもたちに与えられるのはすごく良いなと思いました。無くなってしまうものだからこそ、思い出と感謝を込めて絵を描くプロジェクトは素敵だなと思います。

特に印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。

針谷校長先生各学年の校舎ペイントは、子どもたちが生き生きと描いているのを見て教職員一同大変嬉しく思いました。描かれた壁には、校舎に対する子どもたちの「感謝」の気持ちが込められており、絵を写した写真掲示は、児童のみならず保護者からの喜びの声が多く聞かれました。終業式までの間、毎週のように校舎へ絵が描き足されていき、日増しに明るい校舎へとなっていく壁画に、子どもたちをはじめ、保護者や地域の方々も足を止めて見入る姿が見られました。

堀江先生本校での校舎ペイントは、5月中旬から7月初旬の約2ヵ月近い時間をかけて行いました。1年生~6年生、特別支援学級の児童の全員、また地域や卒業生の方々にも筆を持っていただき、校舎に思い出を描き残していくという「ありがとう蔵前小学校校舎!」という校舎ペイントプロジェクトとして実施しました。子どもたちのペイント活動時には、地域のペイントクリエーターの方や東京藝術大学の学生にもボランティアでお手伝いいただき、普段から絵画制作をしている方々による校舎へのペイント活動も実施しました。単に絵を描くのではなく、子どもたちとのペイント活動からインスパイヤ―され蔵前小学校にちなんだテーマで壁画制作をしていただき、子どもの作品と共に校舎への素敵なペイントを施していただきました。

佐藤周作さん子どもによっては色にこだわったり、道具の使い方を教えることで工夫し、大人の想像を超えて描いていく姿が印象的でした。また、アーティストパートとして、ちょうど下校中の子どもたちが集まる下駄箱の上に描かせていただいていたのですが、ものすごい人数の子どもたちが質問をしてくれたり、すごい!と声をあげてくれているのがうれしかったです。

壁画のテーマはどのようにして決められたのですか?

堀江先生各学年の児童から、校舎への思いを込めたイメージ画を募集しました。学校生活の様子など、「思い出に残せたら良いなぁ」と子どもたちが考える楽しい雰囲気のデザイン画を基にしています。

佐藤周作さん子どもたちが描く壁に関しては、学校への感謝と蔵前小学校の特徴でもあるオーケストラ、また事前に下絵を描いてくれた子どもの絵を参考にしました。アーティストパートでは、蔵前小学校のサマーコンサートをする上野動物園の動物たち、子どもたちが作った作品と上履きを纏い明日に向かって飛び立つリュウの絵を描きました。

学校の壁という本来描いてはいけない場所に、初めて子どもたちが描いていくときはどのような反応でしたか?

堀江先生「楽しい!」「校舎に描けるなんて一生の思い出!」と子どもたちは校舎へのペイント活動が特別なものであるということを理解している様子でした。「むこうの校舎にいっても頑張るからね!」と、移転先での生活に対する気持ちを描きながらつぶやく児童もいました。 片付けの際には、「もう終わっちゃうの~」とまだまだ描いていたいという気持ちがいっぱいだったようです。同時に、お世話になった地域のクリエイターや学生とも仲良しになり、「また一緒に描こうね!」と笑顔でお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えていました。

佐藤周作さんとても自由にのびのびと描いていたように思います。授業の中での作業でもあったので、友達と協力し合い、片付けなども意識してもらいながら作業しました。

子どもたちが撮影した写真や、撮影している様子をご覧になっていかがでしたか?

堀江先生カメラマンになった子どもたちは一眼レフを操作できるということに、とても興奮していました。子どもカメラマンは、ペイント活動中に一生懸命子どもたちの様子を撮影しており、小さくても立派なカメラマンとして撮影にあたっていました。撮影した写真には、子どもたちが楽しげに描いている様子がたくさん映し出されていました。「ぼく将来カメラマンになる!」と将来の夢にもつなげている児童もいました。子ども同士で撮影するからこそ、子どもならではの豊かな表情がファインダー越しで撮影できたのだなぁと実感しています。

佐藤周作さんとてもよく撮れていて、やはりレンズの向こうが慣れ親しんでいる同級生だということが、自然な表情を引き出していたと思います。

保護者や卒業生、地域住民の皆さんの反応はいかがでしたか?

針谷校長先生7月初旬の地域のお祭りセレモニーでは、地域や保護者の方々に見て頂く機会が多くあり、校舎内外を見ていただき、「すてき!明るい校舎になった!」との声が聞こえてきました。セレモニーでは、卒業生や地域住民の方々にもペイントに参加いただき、完成したペイントの校舎を手持ちのカメラなどでたくさん撮影しながら、思い出と共に記録されていました。当初は、校舎取り壊しを残念に思う声が強くありましたが、「とても良い機会になった」と本プロジェクトによって喜びの声がたくさん聞かれました。

堀江先生数日間での校舎ペイントではなく、長い時間をかけながら、校舎への思いを絵にのせて描き残していこうというのが当初からの計画でした。その甲斐もあったのか、日増しにペイントが進められる中で地域の方々からの喜びの声も増えていき、最終的には校舎で行われる地域が運営するお祭りで、大々的なペイントセレモニーを行いプロジェクトの幕を閉じました。本校の校舎に関わる全ての方々にたくさんの思い出を持っていただける機会となりました。

佐藤周作さん無くなってしまうのが惜しいくらい、素敵な作品になったと言っていました。自分が子どもの頃に出来なかった体験を今になって出来たのも喜んでもらえました。

今後、「校舎の思い出プロジェクト」を多くの小学校にて展開をしていきたいと考えております。 このプロジェクトに今後期待することや、メッセージがございましたらお聞かせください。

針谷校長先生学校の壁という本来描いてはいけない場所に子どもたちが絵を描き、その様子を撮影するという思いがけない取り組みを通して、蔵前小に通う子どもたちをはじめ保護者や地域の方々の忘れられない思い出となりました。校舎の壁に語りかけるように絵を描いている子どもたちの顔や大人ではとても撮影できない子どもたちのベストショットの写真がすばらしく、出来上がった校舎はまるで「蔵前小美術館」のような素敵な空間になり、取り壊すのがますます残念になりました。みんなで一緒に創った思い出は、校舎が無くなっても記録として残し、新校舎が落成してからも語り継いでいきたいと思っています。そして、いつの日か大人になったときに素敵な思い出として子どもたちの心に残ってくれることを期待しています。これから取り組まれる学校のみなさんにも素敵な思い出となることを祈念いたします。

佐藤周作さんとても良い経験をさせていただいたと思います。子どもたちや先生方、地域の方々も繋がって一緒に作り上げられたのが良かったです。また、学校に限らず、日本のよい文化が失われていく現代、銭湯や駄菓子屋さんなど舞台を広げていくのもいいかなと思いました。そこには色々な思い出がありますから。