関東

2015年3月

東京都江戸川区立第三松江小学校

第三松江小学校は1958年に開校し、その後3回にわたる工事を経て、1972年に校舎の鉄筋化が完了しました。長年慣れ親しんだ校舎ですが、2015年4月に取り壊されることが決まり、同年3月、校舎全体をキャンバスにして569名の児童が一斉に、校舎への思いを描き上げました。

01校舎の思い出ギャラリー

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02先生インタビュー

江戸川区立第三松江小学校(左から)森先生、川田副校長先生、北山校長先生、中村先生

校舎とのお別れ集会を行うことになったきっかけについて教えて下さい。

北山校長先生きっかけは、展覧会において6年生に校舎の一部をキャンバスにしてペイントをしてもらったところ、児童が予想以上にイキイキと活動しており、学校内でも好評でした。そこで、児童たちをいつも見守ってもらっている小学校OBの有志組織「おやじの会」にも参加して頂きたいと思い、図書室の校庭向きの壁へのペイントを依頼しました。また、同時期にPTAからもペイントをしたいという要望があり、一緒に検討していたところ、このプロジェクトの話を聞き、協力を依頼しました。

お別れイベントの中で何か印象に残っているエピソードはありますか?

中村先生ある児童が、たくさんの目がある虫を描いていました。どのような絵か分からなかったので児童に聞いてみると、「第三松江小学校を守る虫を描いた。色々な危険を避けられるように、たくさんの目を描いた。」と話しており、児童がそこまで小学校のことを考えていることが印象的でした。

森先生お別れ集会の司会を担当した児童は、人前に立つことが得意な児童ばかりではありませんでしたが、本番までの休み時間、毎日真面目に練習してくれました。 その内1人の児童は直前に欠席してしまいましたが、直前まで一生懸命練習して、無事役目を果たしてくれました。

今回のお別れ集会をやってみてどうだったか、総合的な感想をお聞かせください。

川田副校長先生校舎の取り壊しや仮設への移転はマイナスの部分が多いですが、逆にそれをきっかけとして、今回のお別れイベントを実施できたことは、児童たちにとって貴重な体験になったと思います。 また、児童たちだけでなく、PTAや「おやじの会」も一体となって三松オールスターで取り組めたことは、とても良かったと思います。

中村先生展覧会でのペイントが予想以上に好評でしたので、「6年生だけでなく、全学年で実施してみてはどうか」というお話を北山校長からいただいたことから企画が始まりました。始める上で難しかったのが、展覧会でのペイントと今回のペイントの趣旨が異なることです。展覧会でのペイントは、作品の一部という位置づけであり、完成度や見栄えを意識していました。一方、今回のペイントは、児童たちの心に残ることが一番重要だと思いました。そのためには、どのようなテーマでペイントすることが児童たちにとってベストかを考えながら、企画していきました。 当日は、「机上の紙に描くのと、壁というキャンバスで描くのと何が異なるのか」ということを意識しながら、各学年のペイントを見ていました。最初に感じたのは、キャンバスが児童の身体よりも大きいので、児童たちの心が開放的になって絵を描いているということでした。また、それだけでなく、校舎に対しての「ありがとう」という感謝の気持ちや「寂しい」といった気持ちを、このペイントを通じて表現する思いが強いからこそ、児童たちがあれほどまでに夢中になっていたのだと感じました。こちらの想像以上に強い想いを持って児童たちが絵を描いていたことが一番の発見でした。

森先生私だけでなく、きっと児童たちも、校舎の取り壊しについて、言葉だけでは寂しさや校舎とのお別れの実感がなかったように思います。今回のお別れ集会、ペイント、撮影などの「活動」を行う中で、実感が湧いたり、様々な思いが現れてきたように感じました。今回の活動を行わなければ、きっと児童たちもそこまでの想いを感じなかったのではないかと思うので、実際に頭で考えたり、体を動かして活動したことは、とても意義のあることだったと思います。

保護者の方が参加された事で何か印象に残っているエピソードはありますか?

北山校長先生PTAの方から参加したいとの依頼があり、美大出身の方が中心となって原案を考えて作成して頂きました。仕上げで鳥の目を描くのに1羽に10分ほど掛けていらっしゃって、真剣さや強い想いを感じました。 また、「おやじの会」にペイントを依頼したところ、元々「おやじの会」でもペイントを行いたいという要望があり、思惑が一致していました。そこで折角なので、そこで折角なので、「メッセージ性のある絵」というテーマで依頼しました。その依頼をもとに、「おやじの会」で原案を考え、子どもたちを見守る図案にし、それを前日の夜にプロジェクターで投影しながら、ペイントを行ってくれました。

川田副校長先生児童たちが月曜日に登校して「おやじの会」の絵を見た時は、びっくりして近くまで寄って見ていました。 階段に描いた絵は、最初は不思議がって見ていましたが、遠くから見て理解できた児童は、友達にそのことを教えてあげていて、盛り上がっていました。

森先生登校班を送ってくださるPTAの方々が、「おやじの会」のペイントの噂を聞き、校門の外から興味深く眺めていらっしゃっていたのがとても印象的でした。

今後、「校舎の思い出プロジェクト」を多くの小学校にて展開をしていきたいと考えております。 このプロジェクトに今後期待することや、メッセージがございましたらお聞かせください。

北山校長先生ぺんてる株式会社とキヤノンマーケティングジャパン株式会社の連携による本プロジェクトは、素晴らしいと思いました。実際に行って本当に良かったと感じております。本校だけでなく、他校においても是非とも実施すれば、児童も大いに喜び、またいい思い出となります。お薦めします。

川田副校長先生校舎の取り壊しや仮設への移転というマイナスをプラスにする取り組みなので、色々な学校で行ってもらいたいと思います。要望としては今後もこのプロジェクトを長い期間継続して欲しいです。

森先生学校としては新たな挑戦ではありましたが、折角の機会なので挑戦する価値があり、実施したことへの意義がありました。是非他校でも挑戦して頂きたいと思います。集会や描いているシーンを保護者や地域の皆さんにも見て頂けたら、尚良かったと思います。

中村先生ぺんてる株式会社の画材というアナログも、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の一眼レフカメラというデジタルも、学校教育には必要不可欠だと思います。その教育を学校で行うことは当然だと思いますが、その専門家の企業の方と連携しながら活動することが大事だと、このプロジェクトを通じて感じました。支援をしていただいた両社には大変ありがたく、成果が数字で表れにくい中で支援して頂きました。利益のためでなく他人のために役に立つという両社の姿勢、お互いに助け合いながら成り立っているということを児童たちに伝えられるプロジェクトだと感じています。