関東

2015年6月

東京都北区立なでしこ小学校

なでしこ小学校は、平成14年に第二岩淵小学校と志茂小学校が統合してできた学校です。築58年となる校舎の建て替え工事が始まる夏休み前の2015年6月、なでしこ小学校では各学年でテーマを決め、児童の皆さんが校舎との思い出や学校での出来事を思い思いに描きました。

01校舎の思い出ギャラリー

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02先生インタビュー

東京都北区立なでしこ小学校(左から)石井副校長先生、早川校長先生、山本先生

校舎とのお別れ集会を行うことになったきっかけについてお聞かせください。

早川校長先生今年度で移転するということは、およそ3年前から分かっていました。92年間の本校の歴史の中で、58年もの長きに亘り子どもたちの学舎としてまさに子どもたちを撫でるように慈しみ、その身の内に納めてきたこの校舎に対して、感謝の気持ちを表そう。そのために何か記念になる行事を企画したい。それは、子どもたちの思いやりや感謝の心を育てる教育的効果も発掘できる有意義なものにしたいと考えていましたが、昨年の初め頃にこの「校舎の思い出プロジェクト」の企画を知りました。また、同じ頃にPTAからも同じ企画があることを知り、この機会を是非活かしたい、お礼の気持ちを校舎にお返しする好機にしたいと、計画がスタートしました。今年度になり企画が具体化するに連れ、例年の本校の子どもたちのお祭り「なでしこまつり」と同時企画として作り上げていくことが決まり、より豊かな内容として当日まで着々と進行してきました。多くの子どもたちの感謝の気持ちの結晶が今、なでしこ小学校の壁面に描かれています。

「校舎の思い出プロジェクト」のサポートプログラムはいかがでしたか?

早川校長先生大変きめ細かく、計画的に進捗してくださり、感謝いたしております。学校側と共に本企画を実りあるものにしようと大変熱心に取り組んでくださったことで、日に日に皆の気持ちが高まり、大きな実となって、子どもたちの心に永遠に残るすばらしい思い出となりました。ありがとうございました。

石井副校長先生児童のみならず、PTA、親父の会等に声掛けをいたしましたところ、たくさんの方々が楽しみながらお世話になった校舎にペイントを行いました。中にはペイント作業をしながら、小学生当時お世話になった先生の話で盛り上がりながら描いた親世代の方々もおられました。大変貴重な機会を与えてくださり、ありがとうございました。

特に印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。

早川校長先生子どもたちはまさに天才。思い思いに描く中にも、それぞれが自分の学校に対する思いを筆先に込めて素晴らしい世界を描ききっていました。真似ではない自然なピカソ風あり、ゴッホ風ありの芸術空間が思い出いっぱいの校舎に展開されました。感動しました。

石井副校長先生PTAの方々に昇降口付近に絵を描いていただくことになりました。当日は出張があり、学校に戻ってみると、色とりどりの花々が咲き誇っていました。 とても華やかな玄関に迎えられ、気持ちが温かくなりました。登校する子どもたちの気持ちもきっと温かくなっていることでしょう。

山本先生ある児童が窓に絵を描いている際に空白の部分がありました。「ここには(あえて)塗らないのかな?」と、声をかけたところ、「ここはね、外の空の色によって変わるの!」と自ら素材を活かした発想を語ってくれました。その他にも階段のカーブになっているところに校舎の絵を描いて校舎の絵を立体的に見せる工夫をするなど、素材や場所を活かした豊かな発想を元に絵を描いている子どもたちの姿がとても印象的でした。

壁画のテーマはどのようにして決められたのですか?

山本先生各学級、子どもたちと先生で話し合って決めたようです。 1年生は「なかよし」、2年生は「笑顔で遊んでいる自分」、3年生は「風船とばし、なでしこの花」、4年生は「あったらいいな、こんな学校」、5年生は「なでしこ小、春夏秋冬」、6年生は「私のなりたい職業」、5組は「いってみよう!うちゅうのたび」と、なでしこ小で過ごしてきた日々の楽しかった一ページや、これからの自分たちの未来についてなど、明るいテーマを設定していました。

学校の壁という本来描いてはいけない場所に、初めて子どもたちが描いていくときはどのような反応でしたか?

早川校長先生いつもは限られた紙上の空間にしか描くことはできませんが、校舎の壁面キャンバスは大きく、描けば描くほど限りなく筆が進められる。思い思いの色で、汚れても平気、自由な描写は楽しくないはずがありません。子どもたちの、その目の輝きが何よりもその証明でした。

山本先生私自身が思っていたよりも、みんな大胆に描き始めていました。本来描いてはいけない、と言われていたものに、先生たちから「描いていいよ」と正式な許可を得たことで、とても興奮した様子でした。

子どもたちが撮影した写真や、撮影している様子をご覧になっていかがでしたか?

早川校長先生やはり、大人の見ているものと子どもの見ているものは違うということです。大人は自分が見ているものは子どもも見ていると思い込んでいるということでしょうか。子どもの視点が大変興味深かったです

山本先生子どもの視点から映される写真がとても新鮮でした。大人では自然に撮ることのできないような角度、そして友達の飾り気のない自然な笑顔など、子ども同士だからこそ撮れるものがあるのだな、と感じました。

保護者や卒業生、地域住民の皆さんの反応はいかがでしたか?

早川校長先生保護者・地域の方々の反応は驚くほど良好です。やはり思う存分壁面キャンバスに描ける喜びは大きく、2日がかりの大作有り、仕事帰りに数回に分けて描く方、やがて壊してしまうのが惜しい大作は一抹の寂しさを漂わせて、発表の日を迎えました。

山本先生プロジェクトが進んでいくにつれ、保護者の方々も有志で校舎に絵を描いていただけるくらい、大変好評でした。 なでしこまつり当日も、来校された方々限定のペインティングイベントをさせていただきましたが、大人からもたくさんの「楽しい」という声をいただきました。だんだんとにぎやかになっていく校舎を見て、「この学校がなくなってしまうのがもったいなくなるね」と少し切なくなってしまうくらい、大人も夢中になっていました。

今後、「校舎の思い出プロジェクト」を多くの小学校にて展開をしていきたいと考えております。 このプロジェクトに今後期待することや、メッセージがございましたらお聞かせください。

早川校長先生大変すばらしい企画です。戦後建設された多くのビルが建て替え時期になる。この時期を好機として、「ぺんてる」と「キヤノンマーケティングジャパン」が手を組み、思い出作りのお手伝い事業を展開されることは、大変有意義で教育的効果および価値の高い事業だと思います。今後とも本事業を益々発展させることを願ってやみません。ありがとうございました。